最低なのに恋をした
専務が一旦リビングから出ていった。
私はダイニングテーブルの椅子に腰をかける。
そして専務がくるあいだ、手帳を開き今日のスケジュールを頭の中で確認する。
副社長から接触があった日か10日が過ぎた。
あれから気になる事は特になく、専務は相変わらず忙しい。
変更があったことといえば、私は専務に同行しなくて良くなったことだ。
専務の周辺でトラブルが起きそうな事は皆無、という事で私は通常業務に戻った。
同行していた時は移動中にパソコンで作業するなど、私も忙しく動き回っていた。
仕事中の専務を仕事の一貫として見ている事ができたのは正直役得だった。
顔だけじゃない。前の部署にいた時も仕事ができると言う評判だったが、専務になってからもそうだ。
自ら動き周りもそれについていく。
女たらし、というより“人たらし”なのかもしれない。
「安西さん」
いつの間にか着替えを終えて戻ってきた専務が椅子に座る。
専務はニコッとコチラに笑いかけながら「いただきます」と手を合わせる。
私もそれに続いて「いただきます」と呟く。
朝からキレイな顔してるな、なんて思いながらおむすびを口に運ぶ。
「安西さん、今夜空いてる?ご飯食べに行こう」
「今夜ですか?」
ドキッと胸が跳ね上がる。私は少し考えたフリをする。用事なんてないんだけど、ほんの少しだけ見栄をはる。
「大丈夫です」
専務と食事。明日は休み。今夜こそか!?
顔に出ないようにドキドキが止まらなくなってしまう。
「安西さんに喜んでもらえてうれしいよ」
クスクス笑う専務の声に顔を上げる。
私、顔に出ていたのだろうか。顔がカッと赤くなるのを感じた。
「…それはよかったです…」
恥ずかしい。自分はどれだけ感情が顔に出るのだろう。顔に出ないように、無の表情をしているつもりだったのに。
チラッと専務を見ると、嬉しそうに満足そうな顔をしている。
「いつも思ってたんだけど、安西さんもここに住めばいいのにね」
サラッととんでもないことを何でもないような顔で専務が言った。
「え」
不意打ちすぎて何も言えなくなってしまう。
どのリアクションが正解なのか。
「そうなったらいいなーって俺の願望」
甘えた表情でコチラを見つめる専務にあざとさを感じながら、冗談なのか本気なのか読めない。
「…そうですか…」
わからない。提案されたわけではない?
まぁ、まだ手も出されていないし。
中学生か高校生のような初々しい接触しかないし。
一緒に住んだら手を出されるのだろうか…?
チラリと時計を見る。
「あ、専務、私出ますね」
そろそろ出勤しなければいけない。専務と一緒に出勤するわけにはいかないので、私が先に出る。仕事の準備もあるので丁度良いのだ。
急いで自分の食器を流しに持っていきサラッと水で流し食洗機に入れる。
「それじゃあまたあとでね」
専務は優しく私に声をかける。
「はい。それでは」
冷静な秘書にスイッチを入れる。
専務に頭を下げ玄関に向かおうとした時、専務に手招きをされた。
「忘れ物だよ」
何か忘れた?と辺りを見回しながら、専務の元に近寄る。
「忘れ物って…」
私が専務の顔を見ると同時にそのキレイな顔が近づいてきてチュッとキスをしすぐに離れていった。
軽いキスなのにすぐに顔が赤くなってしまう自分が悔しい。
「いってらっしゃいのキス」
専務が私の頭を撫でる。私は悔しくなってしまった。
私ばかりがドキドキして、それなのに深いキスもしてこないし、手を出してこないし…
私はダイニングテーブルの椅子に腰をかける。
そして専務がくるあいだ、手帳を開き今日のスケジュールを頭の中で確認する。
副社長から接触があった日か10日が過ぎた。
あれから気になる事は特になく、専務は相変わらず忙しい。
変更があったことといえば、私は専務に同行しなくて良くなったことだ。
専務の周辺でトラブルが起きそうな事は皆無、という事で私は通常業務に戻った。
同行していた時は移動中にパソコンで作業するなど、私も忙しく動き回っていた。
仕事中の専務を仕事の一貫として見ている事ができたのは正直役得だった。
顔だけじゃない。前の部署にいた時も仕事ができると言う評判だったが、専務になってからもそうだ。
自ら動き周りもそれについていく。
女たらし、というより“人たらし”なのかもしれない。
「安西さん」
いつの間にか着替えを終えて戻ってきた専務が椅子に座る。
専務はニコッとコチラに笑いかけながら「いただきます」と手を合わせる。
私もそれに続いて「いただきます」と呟く。
朝からキレイな顔してるな、なんて思いながらおむすびを口に運ぶ。
「安西さん、今夜空いてる?ご飯食べに行こう」
「今夜ですか?」
ドキッと胸が跳ね上がる。私は少し考えたフリをする。用事なんてないんだけど、ほんの少しだけ見栄をはる。
「大丈夫です」
専務と食事。明日は休み。今夜こそか!?
顔に出ないようにドキドキが止まらなくなってしまう。
「安西さんに喜んでもらえてうれしいよ」
クスクス笑う専務の声に顔を上げる。
私、顔に出ていたのだろうか。顔がカッと赤くなるのを感じた。
「…それはよかったです…」
恥ずかしい。自分はどれだけ感情が顔に出るのだろう。顔に出ないように、無の表情をしているつもりだったのに。
チラッと専務を見ると、嬉しそうに満足そうな顔をしている。
「いつも思ってたんだけど、安西さんもここに住めばいいのにね」
サラッととんでもないことを何でもないような顔で専務が言った。
「え」
不意打ちすぎて何も言えなくなってしまう。
どのリアクションが正解なのか。
「そうなったらいいなーって俺の願望」
甘えた表情でコチラを見つめる専務にあざとさを感じながら、冗談なのか本気なのか読めない。
「…そうですか…」
わからない。提案されたわけではない?
まぁ、まだ手も出されていないし。
中学生か高校生のような初々しい接触しかないし。
一緒に住んだら手を出されるのだろうか…?
チラリと時計を見る。
「あ、専務、私出ますね」
そろそろ出勤しなければいけない。専務と一緒に出勤するわけにはいかないので、私が先に出る。仕事の準備もあるので丁度良いのだ。
急いで自分の食器を流しに持っていきサラッと水で流し食洗機に入れる。
「それじゃあまたあとでね」
専務は優しく私に声をかける。
「はい。それでは」
冷静な秘書にスイッチを入れる。
専務に頭を下げ玄関に向かおうとした時、専務に手招きをされた。
「忘れ物だよ」
何か忘れた?と辺りを見回しながら、専務の元に近寄る。
「忘れ物って…」
私が専務の顔を見ると同時にそのキレイな顔が近づいてきてチュッとキスをしすぐに離れていった。
軽いキスなのにすぐに顔が赤くなってしまう自分が悔しい。
「いってらっしゃいのキス」
専務が私の頭を撫でる。私は悔しくなってしまった。
私ばかりがドキドキして、それなのに深いキスもしてこないし、手を出してこないし…