天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
「ありがとう。早乙女先生はいる?」
そう声を掛けると同時に、自動ドアの向こうから一人の男性が現れた。身長が高く整った顔、シルバーフレームのメガネ。一見してドクターとわかるその人は望月さんを見た後ため息を付いた。
「お前、何してるんだ?」
静かで冷淡に聞こえる声は、なぜか昔の龍一郎さんを思い出して、その人をジッと見つめてしまった。
そんな私の視線をものともせず、表情を変えずその人は望月さんに視線を向けていた。
「駅の階段で後ろからぶつかってしまったんだ。右の足首。」
その声に白衣の男性は車いすに座っている私に視線を向け、今までとは違う柔らかな笑顔を浮かべた。
「外科医の早乙女です。望月先生の同僚です。よろしくお願いします」
「え? 望月先生?」
私が驚いて声を上げれば、早乙女と名乗ったその人が驚いたように望月先生を見た。