天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
近づく距離
「一人で行けるから大丈夫」
仕事に行かなければいけない舞子に私は微笑むと、泣きすぎで若干浮腫んでいる顔をペシっと叩いた。
昨夜、タクシーで迎えに来てくれた舞子は、何も聞かずとりあえず泣かせてくれた。
そして、ポツポツと口を開く私の話を黙って聞いてくれて、眠ったのはお互い朝方だった。
きっと眠たいだろう。それでも嫌な顔一せず親身になってくれて感謝しかない。
「ごめんね、仕事なのに」
「そんなことは気にしなくていいの。それより大丈夫? 一人で本当に行けるの?」
私の顔と足を交互に見ながら、舞子が大きなため息を付くのも仕方がないと私は苦笑する。
「タクシーで行くし大丈夫」
心配を掛けないように明るく言うと、舞子は私の額を突っついた。
「無理をしているのが丸わかり。でも、どうするの? うちにいるのは全然いいけど、このままでいいの?」
そのセリフに私はジッと唇を噛んで思案する。婚姻届が出されていれば、確かにいろいろ手続きがあるかもしれないがその必要はない。