天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
「ごめん、たぶん前の私の部屋、まだあいていると思うしまた契約してくる」
「そう言うことじゃないでしょ? 冷徹上司をどうするかってことよ。別に向こうだって好きな人がいようが、佐知と結婚しようとしていたんだし、これから振り向かせればいいじゃない」
舞子にジッと見つめられて私は、黙り込んでしまう。
確かにずっと、いつか龍一郎さんが私を見てくれればいい、心を開いてくれたら嬉しい。そう思ってきた。だから、あの彼が結婚を考えていた人がいたことがショックだった。
誰もできなかったことを、私はなんとか掴みたい。そう思っていたが、もう過去に彼の心を奪った人がいた事実は、私にかなりのダメージを与えていた。
「でも……。誰かの変わりはきついよ。誰もいなかったなら頑張りたかったけど」
ボソッと言った私に、舞子も小さくため息を付いた。
「まあ、そうだけど。とりあえず落ち着く時間が必要ね。病院に行ったら考えたらいいわ」
諭すように言うと、舞子は仕事へと出かけて行った。