天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
私もお願いしたタクシーがもうすぐ到着する時間だ。五階建てのマンションはエレベータが付いており、それだけでもだいぶ助かった。
ゆっくりと大きめのサンダルを履いて下へと降りると、ちょうどタクシーが来ていて乗り込んだ。
予約時間には十分間に合いそうでホッとしつつ、タクシーの窓から外を眺める。
どうして私の茶番に付き合って、婚姻届をだしたなんて嘘をついたの?
気の迷いって。その人を忘れたかったの?
今までの幸せな時間がすべて嘘だったのかと、また涙が零れそうになるのを必死に耐えると私は小さく息を吐いた。
病院のエントランスについて、受付をすませ廊下の待合室に座っていると「若林さん」と私を呼ぶ声が聞こえた。