天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
中へ入ると、先生と看護師の女性が驚いたように私たちを見ていたが、すぐに先生が龍一郎さんに声を掛ける。
「あっ、そのベッドへどうぞ」
まるで壊れ物を扱うように、龍一郎さんはそっと私を下ろすと、心配そうにその場に立っていた。
「少し腫れてきましたね。もう少し固定して動かさないようにしてください」
その言葉に、口をだしたのは龍一郎さんだった。
「わかりました。絶対に動かせません」
「龍一郎さん、何を言ってるの……」
今日も舞子のところに帰るつもりだったし、まったく動かないなんて無理に決まっている。
「多少は大丈夫ですよ。ご主人」
冷徹上司など到底想像がつかない龍一郎さんを安心させるように、先生は優しく声を掛ける。
「本当ですか?」
「はい、骨にも異常ありませんし、大丈夫です」
その言葉を聞いて、ようやく安堵したように龍一郎さんは大きく息を吐いた。