天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
「ありがとうございました」
頭をさげて立ち上がろうとするのを、龍一郎さんがすごい勢いで阻止する。
「動かすなって言われただろ!」
まるで仕事のような言い方に、私は呆然と口が開いてしまっていた。
そんな私たちを見かねて、看護師さんが車いすを持ってきてくれる。大げさすぎる対応に申し訳なさと、恥ずかしさが募るが、そんなことを言えるような雰囲気ではない。
いったいどうなっているのか全く分からない。
私がどうして家をでたのか、きっとわかっているはずなのに。龍一郎さんをこれ以上巻き込みたくなかったのに。
そんな思いのまま、車いすに乗り診察室を出れば、そこには望月先生が待っていた。
出てきた途端、私たちに向かって頭を下げる。