天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
本当のお父様への反抗で始まってしまった私たちは、どうなるのだろう。
急に不安になった私は、突きつけられた現実に無意識に口を閉じていた。
「佐知? どうした」
急に黙り込んだ私に龍一郎さんが、心配そうな瞳を向ける。
「いえ、なんか幸せになると、不安になるというか……」
曖昧に言葉を伝えれば、龍一郎さんは意味がわからないと言った表情を浮かべる。
「龍一郎さん、完璧なんですもん。私なんかでいいのかなって。それにお父様のことも……」
ついネガティブな言葉が口をついてしまい、私はハッと言葉を止めた。
どこかの令嬢との結婚話は大丈夫なのだろうか? その不安も拭えずつい言ってしまった。
「ごめんなさい」
「佐知」
怒った? そう思った私だったが驚くぐらい優しい声音に私は視線を上げた。
「それは俺の方だ」
「え?」
言われた意味が解らなくて、私はポカンとして彼を見る。