天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
「今日は、場所を用意してお会いになります」
その言葉に初めて龍一郎さんの瞳が揺れるのがわかった。この人が龍一郎さんの言っていたお父様の弁護士で、今まで一度も会う事がなかったそう言っていたことを思い出す。
「今更必要ありません」
しかし、すぐにいつもの冷静な彼に戻ると静かに声を発した。
「龍一郎様、一度だけきちんとお話を」
「今まで一度も会おうとしなかったのに、使える駒がなくなりそうになったら手のひらを反すのですか?」
声音は静かに聞こえるが、明らかに怒りを含んだ龍一郎さんに元永さんも言い淀む。
「行こう?」
つい零れ落ちてしまった私の声に、龍一郎さんが驚いたように私に視線を落とす。
「佐知!」