天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~


車道に止まっていた、明らかに高級車に私たちは案内される。運転手が静かに扉を開けてくる様子を初めて見た私は戸惑ってしまう。
これが龍一郎さんの住む世界なのだ。
エスコートされるように龍一郎さんに促され、その後部座席に座れば嫌でも緊張が走る。車内もピリッとした空気が広がっていた。

十分程走ると、木々に囲まれた大きな門の中へと車が入って行く。
一軒普通の民家のように見えるが、そこは個室になった料亭で政治家などが利用しそうな店だと気づいた。

「セキュリティ対策もばっちりですね」
嫌味ともとれるその言葉に、元永さんは何も言わない。
和服の上品な女性に案内をされたのは、大きな和室だった。縁側の向こうには見事な日本庭園があり、部屋の中には立派な掛塾に美しい生け花が飾られる床の間。
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