天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
「佐知、疲れただろ? ごめんな」
申し訳なさそうに表情を歪める龍一郎さんに、私は小さく笑顔で首を振る。
「今度は、みんなでお母様のお墓にいきましょう」
そんな私に、龍一郎さんは頷きながら思い出したように口にした。
「父が母親の病床にいたことを初めて知った。今まで子供みたいに恨んできたけど、母の墓だってきちんとしてくれたのは父だったんだな。何もわかっていなかったのが恥ずかしいよ。佐知、隣にいてくれてありがとう。いてくれたから俺は今日素直にいろいろ受け入れられたよ」
穏やかな表情で青空を見上げる龍一郎さんに、私も一緒に空を見上げた。