天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~


私といえば、久しぶりの実家ですでに泣きそうな両親を宥めながら夜を過ごした。
自分たちで結婚をしろとずっと言っていたのに、いざとなれば寂しいと泣く両親だが、そのおかげで私は龍一郎さんとこうして結婚できるのだ。今は感謝しかない。

「佐知、入っていいか?」
大きな和室の広間の隣の部屋で朝から支度をしていた私に、廊下から声が聞こえる。
いとしい旦那様の声だ。

「どうぞ」
黒の紋付き袴姿の龍一郎さんがそこにはいて、見惚れるほど素敵だ。長身かつ、黒髪でクールな彼に和装はぴったりだった。

「すごい素敵」
そんな私をみて、龍一郎さんは目を細める。

「佐知、きれいだ」
初めのころでは想像もつかない彼に、私はつい笑みが零れる。
私だけに甘い最高の旦那さま。

「さあ、二人とも皆様がお待ちよ」
母の声に、私達はそっと手を取り合った。
< 189 / 191 >

この作品をシェア

pagetop