天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~

俺は鳴り続けるスマホを若林から取ると、営業用の声でその電話に出た。

「初めまして、佐知さんと結婚を前提でお付き合いをさせていただいている和泉龍一郎です」
その電話に周りが盛り上がりを見せ、あろうことか結婚間近のカップルが結婚情報誌についている婚姻届けまで出してきた。
そのころには若林も母親がご機嫌で電話を切ったことに安堵したのか、俺にニコニコと笑いながらお礼を言う。

「ありがとうございます! 部長。助かりました」

「さあ、奥さん、きちんとこれ書けよ」
ここまでする必要があるのだろうか? そうは思うも俺は婚姻届に記入をし、それを渡せば若林も

「はーい」と返事をして書き始めた。

「これで部長は私の旦那様です……ね」
クスクスと可愛らしく笑いながら、若林はコテンと俺の肩にもたれ掛かると寝息を立て始めた。
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