天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む～一夜からはじまる契約結婚～

始まった結婚生活

「佐知！　起きろ」

「もう少しだけ……」
ふわふわのシーツをギュッと抱きしめると、問答無用で髪をぐちゃぐちゃにされて慌てて起き上がる。

「起きました！　起きました！」
慌てて言葉を発して私が起き上がるのを、面白そうに見ながら部長改め龍一郎さんの綺麗な唇が弧を上げる。

「もう二十五分だぞ」

その言葉に私は血の気が引いていく。どうせ起こすならどうしてもっと早く起こしてくれないのか。そんな怒りの言葉を口にする時間も惜しく、私は着替えを始めると後ろに気配を感じる。
すでに準備を完璧に終え、いつも会社で見ている嫌味なほど完璧なスーツ姿の龍一郎さんが扉にもたれ掛かりながらこちらを見ている。

「見ないで！　バカ！」
枕を投げつければ、それをひょいと軽々と避けると、龍一郎さんは出て行った。