天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
たまに私をわざと怒らせるようなことをしてみたり、髪をぐちゃぐちゃにしたりと理解不能なことをしてくるが、それ以外はまったく同居人として問題はなかった。
それに、食費を払うと言って聞かなかった私に、『じゃあ約束の一万円』そんな意味のわからないことを言い、結局私は家賃も食費も何も払うことなく一万円だけを渡しただけだ。
そんな事をクルクルと考えていると、不意に龍一郎さんが口を開く。
「佐知。後ろ」
そう言いながら、彼は後部座席に置いてある紙袋に指だけ向ける。
それを取り、中を覗けば美味しそうなサンドイッチが入っていた。龍一郎さんが朝食を作ってくれていたことが分かるも、朝のバタバタを思い出してつい嫌味が口をつく。
「もっと早く起こしてくれればいいですよね」
そんな私の言葉が聞こえているのだろうが、龍一郎さんは特に何も言わない。