天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~

会社まで数十分の間に、美味しく龍一郎さんの作ってくれた朝食を頂き、パチッと手を合わせた。

「ごちそうさまでした」
朝から至福の時をすごしてニコニコしていると、珍しく龍一郎さんが口を開いた。

「佐知って、会社にいるときと別人みたいだな」

「え? どういう意味ですか?」
最後に龍一郎さんこだわりの、ブレンドコーヒーを飲みながら聞き返す。

「会社で佐知を見ていた時は、そんなに表情が豊かに見えなかった」

「それは龍一郎さんが怖かったからかも……」
つい言葉にしてしまってハッとする。冷徹上司だのなんだの言って恐れていたことは内緒にするべきだったのに。

そう思うも、口からでてしまった言葉は取り消せない。
「ああ、そうだったな。あの初めての夜もずっと連呼してたな。冷徹上司って」
その言葉にサッと血の気が引いていく。いくら酔っていたからといって、本人にその言葉を何度も言っていたなんて。

それに、初めての夜という言葉に、私はドクドクと心臓が音を立てる。
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