天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~

「佐知、食事は? 簡単にすぐ作るから待てるか?」

ネクタイを抜きながら小さく息をついた龍一郎さんに、私はキッチンへ向かうと火をつける。

「佐知?」
そんな私に驚いたようで、彼は動きを止めた。

「私の顔色より龍一郎さんの方が疲れて見えますよ。おしゃれなものはできないけど、どうしても食べたくなって私の地元の料理を作ったので食べてくれます?」
少しだけ反応が怖くて龍一郎さんを窺い見れば、今までで一番の笑顔を見せてくれた。

「ありがとう」
イジワルな物言いが多かった龍一郎さんが、本当に心からいってくれたと思えて私は心が温かくなる。

「お酒は飲みますか?」

「いや、今日は大丈夫だ」
龍一郎さんが小さく首を振るのを見て、私は少しだけ里芋の火が通り過ぎてしまったがめ煮を大皿に盛りつける。
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