天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
「うまい、これ鶏飯っていった?」
「はい、そうです」
地元の味を褒めてもらえてうれしい気持ちで、私も久々に口に運ぶ。
「私の育った家ではよく食べてたんです。九州の田舎なんですけどね」
「佐知は九州生まれか」
お互いそんなことも知らずに結婚したなんてお笑いだが、毎日特に何気ない会話しかしておらず、こうして自分のことをゆっくり話すのは初めてだった。
「そうです。本当に保守的な家なんです。だから結婚しろとうるさくて。だからあんなにあの日は飲みすぎて」
顔をしかめてため息を付けば、龍一郎さんも思い出したようにクスリと笑った。
「確かにお母さんの勢いはすごかったな」
自らその話題を振ってしまったことを後悔するも今更遅い。母の話題まで出されて私は羞恥で消えたくなる。
「本当にごめんなさい」
いたたまれなくて謝罪をすれば、龍一郎さんは「謝ることはない」それだけを言うと残っていたにんじんを口に入れた。