天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
「どうしようかな……」
呟きながらパジャマから着替えると、部屋を出て洗面所へと向かう。
龍一郎さんはもう起きているだろうか? そんなことを思いながら顔を洗っていると後ろに気配を感じる。
「おはよう」
聞こえた声に振り向きたいが、私の顔は泡だらけだ。そしてこんな状況を見られ慌てていると、後ろから笑い声が聞こえた。
あっ、また面白がってる。
そう思うと、私は洗顔を再開した。洗い終わるとタオルで顔を隠しながら鏡越しに龍一郎さんを見ればじっと私を見ていた。
「使うんですよね? 向こうで待ってくれればいいのに」
ぼやくように言った私の声を聞こえていないふりをして、龍一郎さんはそのまま私を見ていた。
「変わりましょうか?」
なんとなく落ち着かなくて言えば、「いや」と返事が返ってくる。