天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
だったらリビングにいてほしいそう思うも、きっと無駄だと悟る。あきらめて簡単に化粧を始めると、龍一郎さんが口を開いた。
「佐知、あと十五分ね」
「え?」
意味が分からなくて問いかければ、龍一郎さんはくるりと踵を返してしまった。
「出かけよう」
「え? どこへ?」
メイク道具を持ったまま問いかければ、龍一郎さんの背中は見えなかった。
よくわからないまま、急いでメイクをしてバッグにハンカチや必要なものを準備するとリビングへといけば、そこにはすでに完璧に準備をし終わった龍一郎さんがいて、私はわけがわからない。
「今日はお休みなんですか?」
「ああ」
ゆっくりと肯定すると、龍一郎さんは車のキーを手にする。
「行こう。朝食は途中で食べるから」
それ以上言ってくれない彼に内心ため息を付きつつ、とりあえずどこかへ出かけることだけはわかり私は彼の後を追いかけた。