天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
乗りなれている車の助手席に座り、改めてハンドルを握る龍一郎さんに視線を向ける。
今日は黒のパンツに黒のインナーに、オフホワイトのシャツというラフな服装だが、それがまたよく似合っている。シンプルな服をこれほど完璧に着こなせるのはスタイルがいいからだろう。
「見すぎ」
淡々と言われるも、照れているだけで怒っていないことが解る。
「素敵だなって」
臆面もなく言葉にすれば、龍一郎さんの眉がピクリと動くのを私は見逃さないと言わんばかりに、ジッと彼を見つめた。
「佐知、最近面白がっていってないか?」
少しムッとして言いながら、龍一郎さんが小さく息を吐く。
「そんなことないですよ」
クスクスと笑えば、彼は諦めたように何も言わなかった。
「それよりどこに行くんですか?」
「どこだと思う?」
質問を聞き返され、私は軽くにらみつけると口を開く。