天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
「わかる訳がないですよね? 朝いきなり言われて。こういう時の龍一郎さんは絶対教えてくれないですよね」
少し語尾を強く言えば、彼は苦笑して私の髪に触れる。
「約束を覚えていないのは佐知だろ?」
「え? いつ約束したんですか?」
全く記憶にはない私だったが、私のためにどこかへつれて行ってくれるのだとわかり、ふっと息を吐くと前を向いた。
「じゃあ、楽しみにしてます」
そう言って微笑むと、龍一郎さんも柔らかく笑ってくれた。
途中、高速道路のパーキングエリアで簡単に朝食を食べ、少し渋滞した道を進む。
「もしかして箱根?」
案内表示や、だんだんと変わってきた景色に私は口を開いた。
まさか休日にこうしてデートのように、龍一郎さんがどこかに連れてきてくれると思わなかった私は驚いてしまう。