天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~


「若林さん、申し訳ないが今日は定時で上がるから」
知ってます。さっき聞いてましたから。そうは言えず私は「はい」とだけ答える。

「だから、キミも早く上がってくれて構わないから」
その言葉に小さく頷きつつ、私も久しぶりに誰かを誘って食事にでも行こう。
そう決めると、さっき言われた仕事を再開した。

若林佐知 。二十四歳。東京に来て早五年。大学への入学を気に引っ越してきたが、まだこのラッシュの電車にはなれないし乗り換えも複雑すぎる。

私は九州の出身で、観光業が生業としているような場所で生まれ育った。自然に囲まれ、のびのびと育った私はいわゆる大学デビューだ。
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