天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
「よろしくお願いします」
そのまま手を借りて上がると、その男性はタクシーを止めて私を促す。
「小野田病院へ」
迷わずにその病院をつげると、大きな息を吐いてその人は私に視線を向けた。
「望月春樹といいます。本当に申し訳ありませんでした」
真摯に頭を下げられ、私は小さく首を振りそれをやんわりと否定する。
「いえ、私こそぼんやりとしていたので。若林と言います」
痛みをこらえつつ少し笑顔を向ければ、ホッとした表情を見せた後、彼はどこかに電話をし始めた。
そうしている間に、タクシーは小野田病院の救急へと滑り込んだ。
小野田病院はこのあたりではかなり大きな総合病院で、いつも混みあっているイメージがある。
これは長くなるかな……と不意に龍一郎さんを思い出し、連絡をした方がいいのかと思う。
しかし、すぐに車いすを持った看護師の姿が見えた。