天の川のうさぎ、お星様とキスをする
 ただでさえ、はぐれ兎の変わり者。
 さらに与えられた仕事も満足にできないわたくしは、御星さまに合わせる顔がありません。

「ゲッ!? おいおい、ナナオ! 泣かれちゃ困るってば!」

 明らかに速度の落ちた笹舟に気づいて、銀太郎が引き返してきました。

 彼は涙にくれるわたくしを見るなり大きなため息をつき、「仕事だから許せ」と強引にアンドロメダ号へ引っ張りあげて、火のまばらな天の川をひとっとび。

 振り落とされないよう、銀太郎の背に捕まったわたくしは、前から後ろへ飛びすさう星が、赤や橙や緑や黄色のはじける穂を伸ばすのを、ぼんやりと揺らぐ視界にうつしておりました。

 やがて速度がゆるみ、頬をなぜていた風が消え、星の残像が和らぐ頃、わたくしは銀太郎が目指しているらしいカササギの天橋立に、人影を見たのです。

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