ご主人様だけに一途



「これはあきと君に、
 本当にお願いしたいことなんだけど……」


「何?」




「ゲームの話は、学校のみんなには
 内緒にしてくれないかな?」



そんな簡単なお願いで

葉音ちゃんの
とびきりの笑顔が見られるなら

いくらでも、聞いてあげられるのになぁ。





「もちろん、誰にも言わないよ」


まだ、世に出る前のゲームのことだし。


僕が口外したせいで、
ゲームがボツになったら

余計、会社の赤字が募っちゃうもんね。






「あきと君との秘密話は、
 もっとハッピーなものが良かったなぁ」


「……えっ?」


「あっ、何でもないから。
 じゃあ、気を付けて帰ってね」




「バイバイ」と、
 葉音ちゃんが、僕に手を振っている。



その姿が、僕を追い出そうと
しているみたいに見えて

心がギューギュー潰されて、痛い。



< 53 / 96 >

この作品をシェア

pagetop