ご主人様だけに一途
「これはあきと君に、
本当にお願いしたいことなんだけど……」
「何?」
「ゲームの話は、学校のみんなには
内緒にしてくれないかな?」
そんな簡単なお願いで
葉音ちゃんの
とびきりの笑顔が見られるなら
いくらでも、聞いてあげられるのになぁ。
「もちろん、誰にも言わないよ」
まだ、世に出る前のゲームのことだし。
僕が口外したせいで、
ゲームがボツになったら
余計、会社の赤字が募っちゃうもんね。
「あきと君との秘密話は、
もっとハッピーなものが良かったなぁ」
「……えっ?」
「あっ、何でもないから。
じゃあ、気を付けて帰ってね」
「バイバイ」と、
葉音ちゃんが、僕に手を振っている。
その姿が、僕を追い出そうと
しているみたいに見えて
心がギューギュー潰されて、痛い。