ご主人様だけに一途


「誰もいなくなった教室で、
 あきと君は、私に謝ってくれたよね?
 何もしてあげられなくて、ごめんねって」


「あの時は……
 本当に何もして
 あげられなかったから……」




僕だって

葉音ちゃんが、誰かの彼を取る女だって
思ってはいなかったけれど……


先輩たちの口を黙らせるほどの、
確たる証拠はなかったし。



僕が出て行ったところで

余計、葉音ちゃんに
火の粉がかかっちゃうのかな?なんて
思ったら

傍観者でいることしか、できなかった。




本当に情けない男だよ、僕は。


あの時のことを思い出したら

葉音ちゃんに告白しようなんて勢いは、
どこかに逃げちゃった。



やっぱり僕なんかより

男らしい雅光君の方が

葉音ちゃんを幸せにできるのかなぁ?


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