異世界転移したら、そこで強力な治癒術師になってました。
「まって、サリーン! こんな私を鷲掴みするような子が愛し子ですって!?」
甲高い声に思わず私が顔を顰めると、サリーンと呼ばれた黄緑の子は私の目の前に来てニコッと笑うと言った。
「だって、精霊王様は言ったわ。黒髪、黒目の可愛い子だよって」
サリーンの言葉に、アリーンも私をようやくといった感じでマジマジと見つめて言った。
「ホントだわ……。黒髪に黒目の女の子ね……。人間、とりあえず話があるわ。逃げないし、離してくれないかしら?」
なんだかよく分からないけれど、この子達の話は聞いた方が自分のためな気がして、ゆっくりと手を広げてアリーンと呼ばれた水色の子を離した。
離されて、彼女は身なりを整えると両手を腰に当てて私に聞いてきた。
「ふぅ……。さて、人間。名前はなんて言うの?」
「三島優羽みしま ゆうだけど……」
私の名前を聞くと、二人はウンウンと頷いて今度はサリーンが話し出した。
「ユウって言うのね。私は風の妖精サリーン。あなたが捕まえた子は水の妖精アリーンっていうの」
おっとりさんなサリーンの口調は、こんな知らない深い森の中だというのに、和んでしまう。
つい小さく可愛らしい二人の姿にニコニコと聞いていると、さくっとアリーンが言った。
「この子大丈夫かしら? 危機感が無くってよ?」
「大丈夫よ。だってこの子は精霊王様が異界から遣わした、我らが愛し子ですもの」