異世界転移したら、そこで強力な治癒術師になってました。
こうして、馬車にあるまじきかなりの速度で学園から王宮に向かって超特急で走っていた。
普段三十分の距離を御者と馬のコンビネーションの賜物で十分短縮して到着したその後も、ベイルさんの案内で普段駆け抜けることなど許されない、王宮を走り抜けた。
ズルだろうが急ぎなので私はサリーンに補助をさせて、風に背中を押させて駆け抜けた。
多分人生で一番早く走ったと思う。
そうしてたどり着いた医官詰所のベッドには、つい先日謁見の間で見かけた王太子様が青白い顔で寝かせられていた。
私はすぐさま魔法を使う。
「サーチ!」
全身をくまなく見るべく使ったサーチでは、全身を巡る血に変色が見られた。
つまりは、毒物を取らされたことによる中毒症状と見た。
私は原因が毒物と仮定して、それを血液上から浄化するイメージをして治癒を施す。
「ハイ・ヒール」
私がそう呟いて王太子様に手をかざすと、光の粒が染み込んでいき私の手元に黒い血が集まってきた。
私はそれを、魔法で作った瓶に入れて封をした。
「ユウ様、それは?」
医官の長のおじ様医官に聞かれて、私は簡潔に言った。
「王太子様の盛られたであろう毒物が溶け込んだ血です。ここから、毒と血液とに分けて、綺麗な血液は王太子様に戻します」