ソーダ水に溺れる

事の発端は、遡ること数分前。



『あ、起きてた?』


ベッドを背に凭れかかるように座りながらドライヤーで髪を乾かしている最中、机の上に置いていたスマホが突然画面を光らせて振動した。ドライヤーを止めてスマホに手を伸ばすと、画面には "水瀬" の文字。電話に出ると、開口一番にそんな声が聞こえたのだ。


『一応、起きてる』

『一応ってなんだよ』

ふはっ、とわらう声が聞こえたあと、まーいーや、とちいさく呟いたかと思えば。

『ちょっと下まで降りてきてくんね?』

耳を疑うような発言が無機質な機械の向こうから届く。


『えっ、いまから?』

『そ。コンビニ行くの付き合ってほしーの』


スマホを耳元から離して時刻を確認すると、とうに日付は変わっていて、水曜日になって1時間が経とうとしていた。


『ひとりで行きなよ』

『ひとりだとつまんないじゃん』


……だからって、こんな時間に女子大生を呼び出すとは如何なものか。

返答に困り果てしばらく無言でいたあたしに、「待ってんね」と言い残して電話はプツリと切られた。


そして、今に至る、というわけだ。
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