ソーダ水に溺れる

「てか会うの久しぶり?」


その言葉に、曖昧な記憶を手繰り寄せるように、うーんと頭を捻らせる。


「3日前くらいに会わなかったっけ」

「あれ、そーだった?」

「たしか」

「じゃあそうでもないか」


どうやら、記憶が朧気なのはあたしだけじゃないらしい。


長い夏休みに入ってバイトと家とを行き来する毎日のなか。冷蔵庫になにも食料が入っていなかったことをふと帰宅中に思い出したあたしはスーパーに寄った。その帰り、どこかに向かう水瀬にアパートの下で会ったのはたしかそれくらいだったような気がする。



「なに買いに行くの?」

コンビニに行くとは伝えられたものの、なにを買うのかは謎のままだったので不思議に思って尋ねる。

こんな時間にわざわざ出歩くんだもん。いま相当必要なものなんだろうな、と考えていたあたしにとって、その答えは拍子抜けするようなものだった。


「アイスー」

「アイス……」と彼の言葉を反芻し、あたしはアイスを買うためだけに付き合わされてるのか、と肩を落とす。

そんなことを気にも留めない水瀬は「ほら、」と薄く口を開いた。
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