仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「いえ、全然。必要性を感じません、バカバカしい」
吐き捨てるように一刀両断するユーリスに子供のようにムッとする皇帝。
「これはお前のためでもあるのだぞ?ことごとく婚約者を振りやがって!」
「なんでそうなるんです!余計なお世話だと何度言ったらわかるんですか!」
「傷心のお前を慰めようと思ってだなっ!」
「私をダシにして騒ぎたいだけでしょう!」
「まあまあ、ふたりとも」
ヒートアップしてきた皇帝とユーリスを苦笑いで宥めたスペンサー侯爵にユーリスが突っかかる。
「宰相殿!まさかこんな愚行を許すおつもりですか?」
「時には羽目を外すのも悪くないと思うぞ?特に、まじめなユーリスにはな」
「なっ!宰相殿まで!なにをお考えなのです!」
「そうだそうだ!羽目を外せ!ちょっとしたお遊びくらいいいだろう!」
やっぱり遊ぶつもりか!苦々しく皇帝を睨むユーリスに皇帝はびしっと指をさした。
「仮面舞踏会は決定事項!ユーリスはその仮面舞踏会に出ろ!これは命令だ!」
いつもなら命令と言われれば素直に従っていたが、この上なく不満なユーリスは初めて返事をしなかった。
むすっと黙り込むユーリスに皇帝は不敵に笑う。
「ユーリス、お前にひとつ予言をしてやろう」
「はあ?」
またなにを言い出すんだこのだめ皇帝はと口には出さず睨むユーリスの額をツンと突き皇帝は不敵に笑った。
「この仮面舞踏会で、お前は、最愛の人を見つけるはずだ」
「……そんな子供騙しには乗りません」
「これは運命だ。ユーリスも抗うことなど出来はしない」
渋い顔をしたユーリスはふいっと顔を背け執務室を出て行った。

ため息をついた皇帝は苦笑いでスペンサー侯爵を見遣る。
「やれやれ、まったく世話の焼ける」
「陛下も、もう少し穏やかに話せませんかね」
「なんだ、私が悪いのか?素直じゃないユーリスが悪いと思うのだが」
「ユーリスの性格を熟知してるでしょうに」
ユーリスをわざと怒らせているのにとぼけて肩を竦める皇帝にスペンサー侯爵はやれやれと首を振った。

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