仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
皇帝の思い付きで仮面舞踏会は実際に行われることになり、ユーリスは余計な仕事が増えて忙しく宮殿内を走り回る羽目になった。
(くそっ、あほ皇帝め!)
毎日忌々しく仕事をするユーリスの悪態が苛烈になっているのは許してほしい。これでも我慢して口には出さないようにしているのだ。
相変わらず仕事以外で口は利いていないのだが、皇帝はすでに浮かれモードで仮面舞踏会の日を指折り数えている始末だ。
今日も皇帝は性懲りもなくムフムフとにやけた顔してユーリスの前に立つ。
「じゃ~ん!」
両手を後ろにしてなにを隠しているかと思えば、ウキウキしている皇帝の背中から羽つきのバラの彫刻が施されたきらびやかな仮面が出て来た。
「特注仮面!その名も“今宵の主役はこの私、美しい蝶よさあこの私に留れ!”仮面!」
(なんだそのネーミングは!いつの間にそんなもん作ってんだよ国庫の無駄使いだ)
ユーリスは心の中で悪態をつき聞いてないふりをして無視を決め込んだ。しかし皇帝は構わず話し続ける。
「どうどう?いい感じだと思わない?」
派手好きの皇帝にお似合いの仮面だ。呆れたユーリスはチッと舌打ちする。
(無視無視こういうときは相手にしないことだ)
< 103 / 202 >

この作品をシェア

pagetop