仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
続けて二曲ダンスを踊ったふたりは休憩しようとテラスに出た。
熱くなった頬を夜風が気持ちよく撫でていく。
広いテラスにはいくつかソファーとテーブルが用意されていてほかに二組ほどカップルが語らっていた。月明かりとテーブルのキャンドルでほのかに明るく隣とは離れていて声もそれほど気にならない。
フローラを座らせた男性はどこかへ行ってしまうとシャンパンを手に戻ってきた。
グラスを手渡されフローラの隣に座った男性にお礼を言って口をつけると喉が渇いていてこくこくと飲み干してしまった。
それを見た男性はくすりと笑って言った。
「もう一杯持ってきましょうか?」
「い、いえ、はしたないところをお見せしてしまいました」
「いいえ、喉が渇いて当然です。二曲も躍らせてしまい申し訳なかった」
「とんでもございません。とても、楽しかったので」
恥ずかしくなり声を小さくして言うと男性の口角が弓のように上がった。
「私も、楽しかったですよ。やはりあなたを誘ってよかった」
「あの、なぜ私を?」
「あなたをひと目見たときから惹かれるものがあったのです。こんなことは初めてで自分でも驚いていますが、今誘わないと後悔すると思いました」
「はぇ?」
愛の告白にも似たその言葉をさらりと言われてフローラは思わず素が出てしまい変な声が出てしまった。実際はただのリップサービスだろうがこんな状況に慣れていないので動揺する。
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