仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
始めはお互い探るような会話で正体を明かさないように話すのは一苦労だったが、薔薇の君は気を使って他愛ない話をしてくれた。
会話が楽しいと思う一方で、耳に心地いい低い声、静かな話し方、小さな仕草、話せば話すほど、薔薇の君はユーリスに似ている気がしてフローラはまさかと胸がせわしなく騒ぎだした。
でも年齢的にはもう少し上のような気がするし、服装もユーリスの趣味ではないし、それよりなによりユーリスが決して言わない甘い言葉が次々と耳をくすぐるものだから絶対違うと思うのにユーリスに言われてるみたいで頭が混乱する。
「ユリシスは刺繍がお好きなのですね。どのような柄を縫うのです?」
「お花の刺繍が多いです。特にビオラをたくさん練習しました」
「ビオラ、ですか?」
「ええ、ビオラは紫に黄色が基本ですが、ほかにも色が多彩にあって刺繍で描くのが楽しいです」
「うん、愛くるしい可憐な花はユリシスによく似合う」
「えっ」
「ふふっ、照れてるのですか? かわいい方ですねユリシスは」
「うっ……」
時々こうやって仮面の奥から愛おしそうに見つめられ、とくんと胸が高鳴るたびに彼はユーリスではないとがっかりする。
いったいどういう心理なのかフローラは自分でいまいちわからない。
会話が楽しいと思う一方で、耳に心地いい低い声、静かな話し方、小さな仕草、話せば話すほど、薔薇の君はユーリスに似ている気がしてフローラはまさかと胸がせわしなく騒ぎだした。
でも年齢的にはもう少し上のような気がするし、服装もユーリスの趣味ではないし、それよりなによりユーリスが決して言わない甘い言葉が次々と耳をくすぐるものだから絶対違うと思うのにユーリスに言われてるみたいで頭が混乱する。
「ユリシスは刺繍がお好きなのですね。どのような柄を縫うのです?」
「お花の刺繍が多いです。特にビオラをたくさん練習しました」
「ビオラ、ですか?」
「ええ、ビオラは紫に黄色が基本ですが、ほかにも色が多彩にあって刺繍で描くのが楽しいです」
「うん、愛くるしい可憐な花はユリシスによく似合う」
「えっ」
「ふふっ、照れてるのですか? かわいい方ですねユリシスは」
「うっ……」
時々こうやって仮面の奥から愛おしそうに見つめられ、とくんと胸が高鳴るたびに彼はユーリスではないとがっかりする。
いったいどういう心理なのかフローラは自分でいまいちわからない。