仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
***
「よく来たなフローラ嬢」
「お初にお目にかかります、皇帝陛下」
優美な笑顔で出迎えてくれた皇帝にさすがに緊張していたフローラはドキドキしながら挨拶をした。
皇帝の後ろには老齢の男性と皇帝より若そうな男性が立っていたがフローラの目は皇帝に釘付けだった。
陽の光を浴びた金髪が後光のように輝き今まで見たこともないなほど容姿端麗な姿の皇帝。
現在二十八歳の皇帝は若くても威厳があり近寄りがたいと評判だったが以外にもフレンドリーでその美しい笑顔にときめいた。
フローラを観察するように見つめた皇帝はうんうんとひとり頷きすべすべしてそうな顎を撫でる。
緊張で少し強張っているが立ち居振る舞いは凛としていてとても美しい娘だ。愛嬌のある瞳が大きく見開き頬を染めているのがなんとも可愛らしい。
くすっと笑った皇帝は後ろに控える若い男性を視線だけで呼び寄せた。
「フローラ嬢、この者がユーリス ヒルト伯爵。そなたの婚約者となる男だ」
皇帝はそう言って横に並び出たユーリスの肩を叩く。
「此度は私の願いを聞き入れてもらい感謝しているよ。ユーリスは無愛想な奴だが本当は心優しいいい男なのだ。きっとフローラ嬢も彼を気に入るはずだ」
胸に手を当て無言で礼をしたユーリスにフローラはまたもや釘付けになる。
皇帝とは正反対のまるで深夜のような漆黒の髪は艶やかで長めの前髪の下から見える白い仮面が異質で端正な顔の右半分を隠している。
それだけでなく澄んだブルーの瞳はひとたび目が合えば震えが来そうなほど鋭く冷たい。
でもその中に憂いを含んだような寂しげな印象を受け少し気になった。
それにしても、皇帝と並ぶとまるで光と闇のようで相対する美しい男性ふたりを前にフローラは圧倒されて言葉も出ない。
かろうじてユーリスと挨拶は交わしたが彼はそれ以上は話すこともなく黙ってしまった。
一度目が合ったがすぐに逸らされふたりの間に冷たい空気が漂う。
もしかしてこの婚約に乗り気じゃないのかと思わずにはいられない態度にフローラも声がかけられない。
皇帝に負けず劣らず眉目秀麗な彼は想像以上に氷の仮面の貴公子そのものだった。
「よく来たなフローラ嬢」
「お初にお目にかかります、皇帝陛下」
優美な笑顔で出迎えてくれた皇帝にさすがに緊張していたフローラはドキドキしながら挨拶をした。
皇帝の後ろには老齢の男性と皇帝より若そうな男性が立っていたがフローラの目は皇帝に釘付けだった。
陽の光を浴びた金髪が後光のように輝き今まで見たこともないなほど容姿端麗な姿の皇帝。
現在二十八歳の皇帝は若くても威厳があり近寄りがたいと評判だったが以外にもフレンドリーでその美しい笑顔にときめいた。
フローラを観察するように見つめた皇帝はうんうんとひとり頷きすべすべしてそうな顎を撫でる。
緊張で少し強張っているが立ち居振る舞いは凛としていてとても美しい娘だ。愛嬌のある瞳が大きく見開き頬を染めているのがなんとも可愛らしい。
くすっと笑った皇帝は後ろに控える若い男性を視線だけで呼び寄せた。
「フローラ嬢、この者がユーリス ヒルト伯爵。そなたの婚約者となる男だ」
皇帝はそう言って横に並び出たユーリスの肩を叩く。
「此度は私の願いを聞き入れてもらい感謝しているよ。ユーリスは無愛想な奴だが本当は心優しいいい男なのだ。きっとフローラ嬢も彼を気に入るはずだ」
胸に手を当て無言で礼をしたユーリスにフローラはまたもや釘付けになる。
皇帝とは正反対のまるで深夜のような漆黒の髪は艶やかで長めの前髪の下から見える白い仮面が異質で端正な顔の右半分を隠している。
それだけでなく澄んだブルーの瞳はひとたび目が合えば震えが来そうなほど鋭く冷たい。
でもその中に憂いを含んだような寂しげな印象を受け少し気になった。
それにしても、皇帝と並ぶとまるで光と闇のようで相対する美しい男性ふたりを前にフローラは圧倒されて言葉も出ない。
かろうじてユーリスと挨拶は交わしたが彼はそれ以上は話すこともなく黙ってしまった。
一度目が合ったがすぐに逸らされふたりの間に冷たい空気が漂う。
もしかしてこの婚約に乗り気じゃないのかと思わずにはいられない態度にフローラも声がかけられない。
皇帝に負けず劣らず眉目秀麗な彼は想像以上に氷の仮面の貴公子そのものだった。