仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「正式に婚約する前にフローラ嬢は暫くヒルト邸に住みお互いを知る期間を作るように」
「えっ!?」
皇帝のとんでもない命令もフローラは耳に入らず、汗を拭きつつ見守っていた父が思わず声を上げた。
「ああ、その間アーゲイド男爵は宮殿に滞在するように」
「ええ!?」
驚き口をパクパクとさせるだけで言葉の出ないアーゲイド男爵に皇帝は若い者同士打ち解ける時間が必要なのだと説き伏せ、男爵は滞在中丁重にもてなしてやるから安心しろとにやりと笑う。
男爵は恐れおののき汗を拭き恐縮するばかりだ。
フローラは父と離れひとりなのは不安だがそこは他の令嬢より度胸があるだけあってすぐに気を持ち直した。
ユーリスは近寄りがたい印象で気後れしたが少しでも彼と仲良くなりたいとなぜか強く思った。
「フローラ嬢。どうか、ユーリスの内面を見てやってほしい。よろしく頼むぞ」
「はい、かしこまりました」
フローラは皇帝の願いを快く受け止め笑顔で頷いた。

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