仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
こくこくと頷くフローラにうむとひとつ頷いた皇帝はユーリスとフローラの手を取った。
「では、この話は終わりだ。仲直りの握手をしよう」
ふたりの手を重ね合わせ自らの手で挟み込んだ皇帝はぶんぶんと手を振り握手をさせる。
「ちょっ……陛下!」
「よし!次だ!本番はこれからだろう?ユーリス」
「え……」
「ここで誤魔化しは利かないぞ?誠心誠意心を込めて愛を乞え、いいなユーリス」
(はああああああああっ!?)
耳元で囁く皇帝に声が出せずに絶叫。
謝罪を受け入れてもらった暁には屋敷に戻ってきてほしいとお願いするつもりではいたが、愛を乞えとはどういうことか。
皇帝を見れば謝罪はおまけ。これがメインだとでも言いたげににやにやしている。
皇妃も期待するような目でユーリスを見ており、アーゲイド男爵は見守るようにいつもの如く汗を拭いていた。
子供たちだけがキョトンとした顔をしている。
また皇帝の掌の上で転がされてるのだ、してやられたとユーリスは思った。
苛立たしい気持ちはあったものの、不安そうな顔をするフローラを見て息が詰まる。
今ここで、素直な気持ちを伝えないと皇帝は納得しないしアーゲイド男爵も許してはくれないだろう。そして何よりフローラに芽生えたばかりのこの気持ちを伝えたいと思った。
ごくりと生唾を呑んだユーリスはフローラに向き直り真剣な表情で口を開いた。

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