仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「フローラ嬢」
「は、はい」
「こんなことを言っては君は困るだろうが聞いてほしい」
そういったユーリスにフローラはぶんぶんと横に首を振る。
困るなんてあろうはずがない。真剣な表情のユーリスに、フローラは両手を胸の前で握り固唾を飲んでなにを言われるのかとドキドキしながら言葉を待った。
「そっけない態度ばかりしていた私に、君は見た目に囚われず怖がることもなくはじめから向き合おうとしてくれた。無理に素顔を見ようとせず、笑った顔を見せてほしいと言ってくれた時は本当はうれしかった。君の無邪気な笑顔は私にとって光をもたらしてくれた」
うまい言い回しなど得意ではないから言葉を選びながらゆっくりと紡がれる言葉はユーリスの本音。
どうか伝わってくれとユーリスは心から願いを込めてフローラを見つめる。
「私はまだ君に素顔を見せる勇気のない臆病者でずるい人間だ。自分の醜い部分を見せたくないのに、君のことがもっと知りたいもっとそばにいたい、とても……愛おしいと思ってしまった」
どきどきと高揚する頬、高鳴る胸、フローラはユーリスの言葉に感動して涙が溢れてくる。
皇帝一家と男爵の見守る中ユーリスは恥ずかしいことを言っていると自覚して頬が染まる。
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