仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
でもここで止められはしない。誠心誠意を込めてユーリスは床に片膝を着きフローラに手を差し伸べた。
「もう二度と傷つけることはしない。誰よりも大切にすると約束する。だから、もう一度私にチャンスをくれないだろうか?」
「ユーリスさま……」
ユーリスの行動に目を丸くしたフローラの声は震え瞳から涙が零れる。
「もう一度、婚約者として屋敷に戻って来てほしい。家の者たちも君に会いたがっている」
「私で、いいのでしょうか?ユーリスさまならきっともっと相応しい方が」
「君がいいのだ、フローラ嬢。どうか、この手を取ってほしい」
真摯な瞳で見上げてくるユーリスにフローラは感動で胸がいっぱいだ。
戸惑ったのは一瞬で、すぐにユーリスの差し伸べられた手に両手を乗せた。
「私も、お慕いしております。ユーリスさま。どうか、おそばに置いてください」
「フローラ」
涙声で言ったフローラははにかむように笑顔になった。
それには堪らずユーリスは立ち上がり抱き寄せると安堵のため息とともにお礼を言った。
「ありがとうフローラ」
ユーリスがぎゅっと腕に力を籠めるとフローラも遠慮がちに背中に手を回す。
こんなに満ち足りた思いをしたのは初めてかもしれない。

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