仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う

子供たちに惜しまれ、皇帝と皇妃、男爵から笑顔で送り出されたユーリスとフローラは馬車の中で恥ずかしさと緊張でほとんど会話もなくヒルト邸に着いた。
驚いたのはベリル執事はじめ使用人たち。
馬車からユーリスにエスコートされ出てきたフローラに歓喜の声を上げて集まってきた。
目に涙をため笑顔のフローラに皆も泣き笑いで、傍で見ていたユーリスはフローラを連れて帰ってこれてよかったと心からほっとした。

ユーリスはその後暫く、今までの鬱憤を晴らすかのように、使用人たちから愚痴をこぼされることとなる。
「ほんとにあのときの旦那さまは鬼かと思いました」
「せっかく仲良くなれたのに寂しいったらなかったです~」
「お優しいフローラさまを追い出すなど、二度としないで下さませ!」
「男に二言はないよな?お嬢さんを泣かせたら俺らももう黙っちゃいないぜ」
などなど、主人に対して言いたい放題だったが、ユーリスは反論することもなくすべて受け止め反省しきり。
それでも、フローラが帰ってきて一番喜んでいるのはユーリスだ。
ユーリスはフローラを呼び捨てにするようになり、より一層愛しさが増した気がする。
嬉しそうにはにかむのフローラに甘いまなざしを向けるユーリスを使用人たちは微笑ましく見守るのだった。
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