仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
甘い空気を醸しながら束の間のデートを楽しむふたりをまた影から覗く面々がいる。
「ヒルト伯爵め、なんてだらしない顔をしてるんだ」
「でも婚約者殿のあの可愛らしさは鼻の下が伸びるのは当然」
「氷の仮面の貴公子も愛する女性の前では溶けて形無しということか?」
「ハッ!あいつの素顔を見たら彼女も逃げ出すだろうよ」
「なに? 彼女はまだ見ていないというのか?」
「見ていたらあんな顔はできないだろ?」
「まさかずっと見せないつもりか?」
「自分の醜い顔を見せないなど卑怯なやつだ」
コソコソと陰口を叩く男性三人。
その中にはユーリスを毛嫌いしているジェームズバリモアがいた。
帝国学校のときからなにをしても優秀なユーリスをライバル視し、主席をほとんど取られたことは今でも悔しい。
一度だけ出し抜き主席を取ったことがあったが、あれはユーリスが火事に遭い大火傷を負って勉強がままならなかった三年生のときのみ。
次の年には見事奪還され、お前にはがっかりしたと父には激怒され苦汁をなめさせられた。
そんな大嫌いなユーリスに今まで何人もの婚約者がいたがすぐに破談になっていた。
ざまあみろと陰で笑っていたのだが今回ばかりは上手くいきそうで面白くない。
しかも婚約者であるフローラははっきり言ってジェームズの好みど真ん中ときたから悔しさはひとしおだった。
舞踏会でひと目見た時から気になっていたが、すでに隣にはあのユーリスがいた。
羨ましさにユーリスを睨みぎりぎりと歯噛みする。
(彼女にあいつの素性を知らしめて気づかせてやりたい)
「おい、知っているか?最近起きている殺人事件を」
ひとりの男性がより声を潜めてほかのふたりの顔を見る。
「女性が首を絞められ殺害される事件だが、すでに三人殺されている」
「女性ばかりが犠牲になるなど痛ましいな。女性に恨みでもあるのか?」
「目撃者の証言によると黒髪に白い仮面を被った男が殺害現場から走り去るのを見たというが、まさか、ヒルト伯爵ではないか?」
それを聞いてジェームズはにやりと悪辣な笑みを零した。
「ヒルト伯爵め、なんてだらしない顔をしてるんだ」
「でも婚約者殿のあの可愛らしさは鼻の下が伸びるのは当然」
「氷の仮面の貴公子も愛する女性の前では溶けて形無しということか?」
「ハッ!あいつの素顔を見たら彼女も逃げ出すだろうよ」
「なに? 彼女はまだ見ていないというのか?」
「見ていたらあんな顔はできないだろ?」
「まさかずっと見せないつもりか?」
「自分の醜い顔を見せないなど卑怯なやつだ」
コソコソと陰口を叩く男性三人。
その中にはユーリスを毛嫌いしているジェームズバリモアがいた。
帝国学校のときからなにをしても優秀なユーリスをライバル視し、主席をほとんど取られたことは今でも悔しい。
一度だけ出し抜き主席を取ったことがあったが、あれはユーリスが火事に遭い大火傷を負って勉強がままならなかった三年生のときのみ。
次の年には見事奪還され、お前にはがっかりしたと父には激怒され苦汁をなめさせられた。
そんな大嫌いなユーリスに今まで何人もの婚約者がいたがすぐに破談になっていた。
ざまあみろと陰で笑っていたのだが今回ばかりは上手くいきそうで面白くない。
しかも婚約者であるフローラははっきり言ってジェームズの好みど真ん中ときたから悔しさはひとしおだった。
舞踏会でひと目見た時から気になっていたが、すでに隣にはあのユーリスがいた。
羨ましさにユーリスを睨みぎりぎりと歯噛みする。
(彼女にあいつの素性を知らしめて気づかせてやりたい)
「おい、知っているか?最近起きている殺人事件を」
ひとりの男性がより声を潜めてほかのふたりの顔を見る。
「女性が首を絞められ殺害される事件だが、すでに三人殺されている」
「女性ばかりが犠牲になるなど痛ましいな。女性に恨みでもあるのか?」
「目撃者の証言によると黒髪に白い仮面を被った男が殺害現場から走り去るのを見たというが、まさか、ヒルト伯爵ではないか?」
それを聞いてジェームズはにやりと悪辣な笑みを零した。