仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
客間に通されユーリスが帰るまでゆっくりするように言われたフローラは淹れてくれたお茶を飲みマリアを話し相手に緊張も解け寛いだ。
聞けば、この屋敷はユーリスが若干十三歳で設計したのだというのだから驚きだ。
以前住んでた屋敷は火事ですべて燃えてしまったため、暫く皇帝の許に身を寄せていたが、昔の面影を残した新しい屋敷の設計をユーリス自身が手掛けそのニ年後に屋敷が出来上がったという。
それを聞いて改めて部屋の中を見回すと、伝統的なゴシック調でありながら設備などは機能的で新しい。柱などの彫刻が施されているのもユーリスのデザインだというのだからその才能に素晴らしくて感嘆のため息しか出ない。
この屋敷の出来栄えに感嘆した皇帝がその頃構想中だった帝国図書館の設計も任せたという。
図書館の話は聞いていたフローラは機会があれば図書館にも行ってみたいと思う。
ユーリスは昔は絵や彫刻も作っていたのだが火事でなくなってしまいそれ以来自分では作っていないという。
素晴らしい才能だというのにもったいない。
でもその火事で両親を失い失意の中芸術作品を作り出す気力はなかったのだろう。
そう思うととても気の毒でフローラは胸が痛んだ。
その火事で大火傷を負い顔は仮面で隠してる状態で右手は今も少し不自由なのだという。
新しい屋敷が完成してから来たというマリアに彼のことをいろいろ教えてもらい、フローラは増々ユーリスに興味を持った。
いろいろお話したいとユーリスの帰りを待っていたのだが、その日、晩餐の時間が過ぎても深夜近くなってもユーリスは帰って来なかった。

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