仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「おはようございます、フローラさま。まあ、もう起きてらしたのですか？」
「おはようマリア。ええ私はいつもこの時間には起きてますよ」
張り切って朝の支度のお手伝いをしようと起こしに来たはずのマリアはすでに支度を整えていたフローラに目を丸くする。
「そ、そうでございましたか」
お世話できなかったことにしょんぼりとした声を出したマリアにフローラは気づいて声をかけた。
「あ、でも髪を梳かしてくれないかしら。自分ではお手入れが行き届かなくて」
ヘヘっとかわいらしく肩を竦めるフローラにマリアはうれしくなってにこにこで返事をした。
腰まであるウェーブ掛かった亜麻色の髪はツヤツヤしていてとても手入れが行き届いてないように見えない。
柔らかくしっとりしていて触り心地もよく俄然やる気の出たマリアは丁寧に髪を梳かしサイドを編み込みハーフアップにして綺麗に仕上げた。
「すごい！素敵だわ！マリアって器用なのね！」
鏡に映る髪型を見てことのほか喜んだフローラに気をよくしたマリアは得意げに笑う。
「明日から毎日フローラさまのお髪のお手入れは私がやらせていただきます」
「うれしい！お願いねマリア」
二十歳のマリアと歳が近いだけあって気が合うのかふたりはキャッキャと盛り上がっていた。
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