仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
それでも最近はフローラの助言により自宅の中でだけは仮面を外すようになった。
使用人たちは一様に顔をほころばせ誰も目を背けるようなことはしなかった。
それにはユーリスも感動と安堵感で満たされ自宅の中だけは気を許すことができるようになった。
しかしここは自宅の外、気を許せば好奇の目に曝される。
出来れば今後も信頼できる相手にしかこの素顔は見せたくない。
レオンハルトの父である皇帝は無類の信頼をユーリスに寄せてくれてユーリスも普段邪険にしつつも皇帝のことは信頼している。
皇帝の息子とはいえレオンハルトは信頼に値するかどうか、ユーリスも見極めたいところだ。
レオンハルトの真意を探るように見つめていたユーリスはふうっと大きく息を吐いた。
「いいでしょう。私の素顔をお見せします。ただし、私の顔は醜く恐ろしい。あなたは目を逸らさず見ることができますか?」
「できる。できなければ僕はお前の信頼を勝ち取れない」
八歳の子供が見るにはこの顔は酷な気もするのだがレオンハルトの意志は固くユーリスはゆっくりとその白い仮面を取り素顔を曝した。
「っ……」
息を吞んだレオンハルトが目を真ん丸にしてユーリスの顔を凝視する。
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