仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
やはり子供にはこの顔は恐ろしいのだろう、無理して目を逸らさないよう固まっているレオンハルトに声を掛けた。
「私の顔は恐ろしいでしょう? 目を背けてもいいのですよ」
そう言って仮面を再びつけようとするとぐいっと小さな両手がユーリスの頬を挟んだ。
「お前は恐ろしくなんかない! 僕の言う通り素顔を見せてくれたお前を信用する。決して裏切ったりしない。その顔のことも誰にも言わない」
少し涙目の顔は真剣で、真摯に向き合ってくれようとするレオンハルトにユーリスの心は温かくなった。
「では私も、この顔に目を逸らさなかった皇子殿下を信用します。いずれあなたが皇帝陛下になられた時には誠心誠意お仕えいたします」
「うん、男の約束だからなユーリス!」
「はい、約束します」
ぱあっと笑顔になったレオンハルトにユーリスも笑顔になり、約束とばかりにふたりは固く手を握り合った。
晴れやかな顔で手を振り走っていくレオンハルトを見送り仮面をつけたユーリスは緩みそうな頬を片手で抑えた。
「やれやれ、利発な子だとは思っていたが、将来が楽しみだな」
信頼できる人間が増えたことにユーリスは思いのほかうれしくて、いずれ仕えるだろう小さな主の後姿が見えなくなっても頬は緩みっぱなしだった。
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