仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
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「ねえユーリス、お顔を見せて」
「何度言っても駄目ですよ、それよりこれから淑女見習の時間ではないですか?フローラが待っているはずです」
「お顔を見せてくれたらすぐ行くわ」
どこかで聞いたような受け答え。
ユーリスはしつこくついてくる小さなご令嬢に辟易しながら逃げ回っていた。
レオンハルトに続きユーリスの素顔を見たがるのは妹であるアリエラ皇女殿下。
彼女もまたフローラへの告白を見て以来ユーリスに憧れを抱き、興味を持ってしまった。
どちらかというと、ユーリスにというよりフローラがユーリスのことを話すたび、幸せそうな顔をするフローラに乙女心を触発されているようだ。
フローラが好きなユーリスが本当はどんな顔をしているのか? ちょうど、美女と野獣の物語がマイブームなアリエラはその物語をフローラとユーリスに重ね合わせていた。
「ねえねえ、ねえねえ、ユーリスってば!」
どこまでもついてくるあまりにしつこいアリエラに、ユーリスは観念して振り返るとアリエラの目線に合わせるように片膝をついた。