仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「私の顔を見たら恐ろしくて泣いてしまうかもしれませんよ?」
「泣いたりなんかしないわ!だってフローラはユーリスの顔を見ても泣いたりしないでしょう?」
「……ええ、まあ。フローラは私の顔を見ても笑顔でいてくれます」
フローラはいつも仮面を外している姿を見てもニコニコと嬉しそうに笑う。
まるでユーリスの顔には火傷の痕などないかのように気にも留めずに自然に振る舞いユーリスを安心させてくれるのだ。
フローラの笑顔を思い浮かべて自然とユーリスも微笑んでいた。
それを見たアリエラはユーリスが素敵に見えてぽっと頬を赤らめてもじもじしてしまった。
「私もユーリスのお顔が見てみたいの。真実の愛って見た目じゃないんでしょ?」
フローラが教えてくれた。人を見た目で判断してはいけないと。
ユーリスの瞳はとても綺麗なのだと幸せそうに言うフローラがアリエラは羨ましくて仕方がない。
「そうだと、私も思いたいですがね。泣いても知りませんよ?」
夢見がちなアリエラに苦笑いを零し、ユーリスは仮面に手を掛けた。
いよいよユーリスの素顔が見れる。
ワクワクドキドキのアリエラが両手を組み固唾をのんでいると、ユーリスの手がぴたりと止まった。
「やっぱり駄目です」
「えええええ~なんでぇ~!」
落胆したアリエラの盛大な抗議にユーリスは人差し指を立てにやりと笑った。
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