仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「あっアリエラさま!」
せっかくアリエラを見つけたのにまた見失いそうでフローラが追いかけようとすると、その手をユーリスが掴む。
「フローラ」
「えっ!」
振り返った隙にチュッとキスされフローラは驚き目を丸くした。
フローラの両手を握るとユーリスは彼女を愛おし気に見つめる。
「いつもの場所で待ってる」
「は、はい!」
休憩時間にいつも待ち合わせているあの中庭の木陰のことだ。
頬を赤らめ嬉しそうに返事をしたフローラはきゅっとユーリスの手を握り返しアリエラを追いかけ小走りに行ってしまった。

柄にもないことをしてしまった。
ユーリスは口を押さえ羞恥心に打ち震える。
つい衝動的にフローラの唇を奪ってしまった。
でも照れて慌てるフローラがかわいくて我慢できなかった。
フローラがいると触れたくてかわいがりたくて仕方がない。
『やはりお前は私と同じように溺愛体質だったな』と皇帝が得意げに言うのが目に浮かぶ。
それは素直に認めよう。もちろんフローラ限定なのだが。
「仕事仕事」
早く仕事をこなさないとフローラと会う時間が少なくなってしまう。
ユーリスはせかせかと歩き出し仕事に向かったのだった。
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