仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
宮殿の大広間。
煌びやかなシャンデリア、黄金に装飾された壁、天使の絵が天井を飛び回り誇らしげに咲き乱れる花々が至る所で客人の目を楽しませていた。
初めて足を踏み入れたフローラはその豪華絢爛さに圧倒されてユーリスの腕に絡ませた手に力が籠る。
「ヒルト伯爵よ」
「ユーリスさまだわ!」
「あの隣の方は誰?」
「まさか、新しい婚約者?」
あまり舞踏会に顔を出さないユーリスが登場したことで女性たちが色めき立つ。
漆黒の髪と礼服に白い仮面と手袋が浮き立っている。
多少謎めいた仮面があろうとも見目麗しいユーリスは女性のあこがれの的だ。
注目されていることに気づいてフローラがユーリスを見上げると、彼は口をへの字に曲げて不機嫌そうな顔をしていた。
ハッとしたフローラは絡めていた手を離した。
もしかして力を込めて腕を握っていたのが不快だっただろうかと心配する。
「あの、ユーリスさま?」
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